幹細胞とは
再生医療の重要な役割を果たすのが「幹細胞」です。その幹細胞により傷ついた臓器を再生することができます。
なぜ幹細胞は臓器を再生できるのでしょうか?
それは幹細胞が「未分化な細胞」であるからです。
通常の細胞の場合、自分と同じ細胞にしか成長できません。血液の細胞は血液に、皮膚の細胞もやはり皮膚にしかなりません(細胞は分裂することで自分のコピーを作り体を維持しています)。さらに老化や損傷があると修復能力や再生能力が低下していきます。
しかし、「未分化な幹細胞」は、様々な細胞や臓器へ成長し変化することが出来る万能細胞なのです。
通常の細胞自身では修復や再生ができなかった臓器の修復や再生を幹細胞は行うことができ、これまでの治療方法では改善がなかった効果が多数報告されています。
自身の幹細胞をごく少量取り出し培養により増殖を行い投与することで、拒絶反応や合併症、倫理的なリスクを極力少なくした安全性の高い再生医療を実現することができます。
自己幹細胞とは
自分自身の身体から採取した脂肪などの幹細胞を指します。幹細胞は、自己複製能力と分化能力(多分化能)を持つ特殊な細胞で、組織の再生に重要な役割を担っています。
幹細胞の能力を利用した再生医療には、次のようなものがあります。
自己脂肪由来幹細胞治療
自身の脂肪から採取した幹細胞を培養し、点滴で身体に戻して慢性疼痛などの症状を緩和する治療です。
他にも現在では、身体の各所から幹細胞を採取することができます。
幹細胞培養上清液治療
ヒトから採取した幹細胞を培養して増やし、その培養液から幹細胞を取り出して滅菌処理等を施した上澄み溶液を点滴する治療です。美容や若返りに効果が期待されています。
幹細胞で症状が改善する
人間の体には自己修復能力があり、傷んだり、古くなった細胞は修復や再生を行うことができます。
しかし、一度大きく損傷したり老化が進行すると自己修復機能が働かなくなることがあります。
事故・病気のあとの「後遺症」と呼ばれる麻痺などがそれに該当し、改善しないものだといわれてきました。
ところが幹細胞を用いた臨床研究では、回復不能と診断された症状が改善する事例が多く報告されております。どうして幹細胞で症状が改善するのでしょうか?
体に障害が発生すると損傷部位から修復要請の信号が発信されます。その信号を受け取った幹細胞が損傷部位に集まり必要な細胞に変化(=分化)することで、細胞器官が修復・再生し症状が改善します(ホーミング作用)。
慢性期の方よりも急性期のほうが幹細胞治療に適しているというのは、この信号の強さによるものと考えられております。
『悪い部位を切り取らず、人工物に置き換えず、自分の細胞から新たに作り直す』。
幹細胞の多彩な分化能により、回復不能と診断された疾患の改善が多く報告されております。
幹細胞治療で改善する症状
幹細胞を用いた治療は新しい技術のため、まだ全てが解析されておりません。それ故に「根拠がない」などと無理解な批判を受ける事もあります。
しかし、根気強く臨床実験で実証を重ねることで、厚生労働省が認可する新しい治療方法として確立されてきました。
幹細胞治療の効果は非常に広範囲に渡ることが解ってきておりますが、現制度では副作用が極めて少なくかつ治療効果が認められている疾患に限り個別に治療認可が厚生労働省より与えられております。
幹細胞の多彩な分化能により、回復不能と診断された疾患の改善が多く報告されております。
様々な場所から採取できる幹細胞
現在では、身体の各所から幹細胞を採取することができます。それぞれに特徴があるので主要な採取部位を紹介します。
□ 脂肪 -自己脂肪由来幹細胞
腹部など身体から約10~20g程度の少量の脂肪組織を採取し、その脂肪細胞から幹細胞を培養する方法です。細胞採取部位が体表に近いこともあり、採取する際の身体の負担やリスクが大幅に抑えられます。また、脂肪由来の幹細胞の含有量は骨髄由来に比べて500倍と非常多く、増殖力が高いことに加え、臓器修復に有効な成長因子の種類が多いことから、現在の再生医療の主流として多くのクリニックで様々な治療法に活用されています。
また、脂肪由来の幹細胞培養上清液は、骨や軟骨、液性因子の分泌に優れているため、膝などの変形性関節症や美容系アンチエイジングといった再生医療への応用に期待されています。
□ 脊髄 -脊髄由来幹細胞
間葉系幹細胞の他、血液の元となる造血幹細胞の2種類の幹細胞が含まれます。神経再生能力が高く、脳卒中・脊髄損傷など血液疾患の治療に適しています。骨髄の採取に伴う痛みなど患者様の身体への負担がかかるうえ、幹細胞の含有量が少なく、高齢者から採取した場合、その増殖スピードも加齢とともに遅くなるという報告があります。
□ 臍帯 -臍帯由来幹細胞
臍帯とはへその緒のことです。臍帯を流れる血液を通じて赤ちゃんは母体から栄養や酸素などを受け取ります。
出産時にしか採取できない貴重な臍帯血に含まれた造血幹細胞は、白血病や再生不良性貧血などの血液疾患の治療に適用されます。
□ 歯髄 -歯髄由来幹細胞
歯髄細胞とは、歯の中心部分にある歯の神経のことです。
歯髄幹細胞は、歯の硬い組織に守られているため遺伝子に傷が付きにくく、ガンになりにくい細胞で非常に元気、かつ、良質な幹細胞を多く含んでいます。
幹細胞は加齢とともに急激に減少する傾向にあるため、“乳歯や20歳以下の親知らず”などなるべく若い細胞から製造するのが最適です。また、歯から幹細胞を採取し培養するため、骨髄や脂肪などのよく知られている幹細胞の採取方法と比べ、ドナーの負担やリスクがなく、手軽で安全に採取できるのが特長です。
幹細胞治療の効果
身体の各所から採取された幹細胞の主な働きには、創傷治癒・分化・免疫調節などが挙げられ、すでに糖尿病や心筋梗塞・脳梗塞・肝機能障害・ アレルギー疾患など、様々な病気に対する治療への適用が試みられており、幹細胞は、様々な疾患治療への応用が期待されています。
免疫系の制御 | 免疫系を調節・抑制します。 関節リウマチなどの自己免疫疾患に効果が期待できます。 |
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血管新生 | 血管を新たに作って血行を改善します。 動脈硬化症などに効果が期待できます。 |
抗炎症作用 | 関節炎、血管炎などの炎症を抑えます。 |
抗酸化作用 | 活性酸素を減少させ、細胞の老化を防ぎます。 |
組織修復作用 | 損傷したり機能不全となった組織の再生修復を助けます。 |
アポトーシス制御 | 組織内の過剰な細胞死を抑制し細胞の生存率を回復させます。 |
幹細胞治療で改善される症状
幹細胞治療は非常に広範囲に渡り効果があるとともに副作用が極めて少ない治療法です。
また、幹細胞治療には様々な副産物があることが解っており、血管の修複と血流の改善、痛んだ細胞の再生に伴うアンチエイジング効果など、様々な効果が確認されています。
血管の病気 | 心筋梗塞、脳梗塞、腎不全初期、認知症初期、糖尿病などの下肢の虚血 その他血管が病気になってくる病気全般 |
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神経の病気 | 小児麻痺、認知症、脳梗塞、パーキンソン、その他 |
骨・軟骨の病気 | リウマチ、変形性関節炎 |
その他の疾患 | 糖尿病、肝臓病、免疫疾患(難治性の膠原病)、喘息 |